感想「国宝 上 青春篇」「国宝 下 花道篇」
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2019年末から3ヶ月かけて読んだ。いや、聞いた。わたしが時々書く「Audible」のサービスで本を聴いたのだ。 文句なしに5つ星である。
主人公「立花喜久雄」が歌舞伎役者として大成していく一生を描いていくのだが、その浮き沈みがすさまじく、その生き方がまっすぐで、(そしてAudibleだからこそ味わえたのだけれども)その臨場感がとてつもなく、耳で聞いているのだけれどもその先の視界に(わたしは一度も生の歌舞伎というものを見たことがないのだけれども)歌舞伎座で演じられるふるまいがパッと展開される感じがして、ずっとずっと身震いをしながら聴いていた。 作者として吉田修一さんは、声に出して読まれることを想定していたのかどうかわからないけれども、わたしからのおススメはこの本を買って読むのではなくて、ぜひ、Audibleで尾上菊之助さんのナレーション(語り)で聴いてほしいということ。 Audibleは、わたしが自動車で「新潟-福島」間の4時間の退屈なドライブを少しでも心地よい時間にしようと思って契約しているものだが、この作品は退屈しのぎ以上の価値がある。
まだ、2019年度だけれど、わたしにとっての「2019ベスト・オブ・ザ・ベスト」はダントツにこの作品に決定である。
「芸」に魅せられて、24時間、芸のことだけを考えていき、芸の最高潮をめざしていく姿。
その間に繰り広げられる、浮き沈みのある事件。
私自身の対極の世界観(というよりも、わたしには想像のできない日常の生活と言ったほうが正確かな)での物語の展開。これぞ、小説だからこそ描けるわけで……。ガツンとやられました。
事前の知識もないわたしが歌舞伎を見て、退屈に思うのではないかなぁと思いつつ、まだ一度も歌舞伎を見たことがないので、ぜひ一度、人生に一度でいいから、見てみたいなぁ。